換骨奪胎のやり方
2017年8月30日
実は、長い間料理に苦手意識を持っていました。
自分の舌に確信が持てず、それゆえ、レシピをただただ忠実になぞることしかできず。完全にエーベルバッハ少佐のお菓子作り状態(って言って分かる方いらっしゃるのかな…)でした。
レシピに記載されている材料を種類・分量共に完璧に揃えられなければ、もはや私にはその料理は作れませんでした。これは実に不便なことです。
そんな私でしたが、ふと気がつけば最近は気楽に人様のレシピを改造しまくり、それなりに満足のいく食事を作れるようになっています。
少し前の話ですが、いつも楽しく読ませていただいているきゃすぴえさんのブログに
「レシピなんて特に恐れることはありません。」と書かれており、おお、これは至言、と心の底から同意したのですが、少し前の自分だったら俄かにはそうは思えなかったはずです。
どうすればそう思えるようになったのかを具体的に分解してみたくなり、この文章を書いています。料理の経験豊かな方や、料理のセンスのある方は特に意識することなくごく自然になさっていることだと思うので、センス皆無の私が敢えて言語化してみました。
材料の置き換え①:その材料がその料理の中で果たしている機能を(自分なりに)考えてみる。
作ってみたいと思ったレシピの中に、普段買わない材料があったとします。以前の私ならば「これがないとこの料理は作れないのだな」と判断して、即その材料を調達しに走るところです。もちろん、そのレシピをきっかけにその材料の良さに目覚め、その後常備することになる可能性もありますが、そもそも手に入りづらいとか常備しづらいから家にないということも多いのではないかと思います。なので、この部分を自分の常備品にスワップできれば、その後が楽です。
具体的には、先日マッサマンカレーを作ろうと思ったところ、材料にピーナッツが入っていました。私はこれをピーナッツの風味を加えるためと解釈したので、常備品のピーナッツバターで代替可能であろうと考え、そのようにしました。人によっては歯応えや舌触りにちょっとした刺激を加えるためと解釈するかもしれません。そして、そう考える方のお宅にはそれなりの代替品があるのではないかと想像します。人それぞれの解釈次第で、それが各家庭固有の味になるということだと思います。
あと、チリペッパーとか、カイエンヌペッパーとか、レッドペッパーとか。昔はいちいちスパイスの小瓶を買い揃えていましたが、最近は「辛くて赤けりゃいいんだろ?」と一律韓国粉唐辛子です。そのうちミルサーなるものを手に入れた暁には、ベランダの内藤唐辛子がこれに代わる予定(願望)です。
材料の置き換え②:基本的な食材の性質は把握しておく。
炭水化物なのか蛋白質なのか脂質なのか、後は、野菜であればセリ科なのかユリ科なのかアブラナ科なのかナス科なのか、といったことは大体頭に入れておいて、最初のうちはその大まかなグループからあまり逸脱しないところで代替してみると失敗が少ない気がします。
パッケージレスという価値観に憑かれているとレシピ通りの食材が使えないというのはよくあることでした。そのときに、まずは同じ科の野菜で置き換えてみるというやり方は結構役に立ったと思います。
(ただ、パッケージレスにこだわりすぎることについては最近ちょっと疑問を感じつつあります。パッケージなしの普通の食べ物と、パッケージありのオーガニック。ここしばらく前者を優先してきましたが、あるものでちょっと体調を悪くした可能性があり…。)
分量の増減:基本のものさしを持つ。
一般的に言って、水分に対する塩分の適正な割合さえ分かっていれば、あとは自由自在のように思います。
『味つけの法則』という本を以前手元に置いていました。
料理のジャンルごとに大体何%の塩分を入れれば味が決まるのかが事細かに書いてあったのですが(汁ものは○%、和え物は△%という具合で)、私には覚え切れなかったもので、とりあえず原則の約1%を目安に、あとは経験則で加減しています。トマト味のときは塩味が飛びやすいので少し多めに、とか。
あとは私の場合、数年間奥園レシピで毎朝保温ジャー用のスープを作り続けてきました。いかに物覚えが悪い私といえども、300mlのコンテナ一杯分のスープの基本構成は「水150ml+野菜1カップ+肉類50g(挽肉ならば30g)+塩ならば小さじ1/4、醤油ならば小さじ1、みそならば大さじ1/2」である、ということが頭にしみついています。これをベースに適当に分量を増やしたり調味料を替えたりすることができます。
長時間の加熱によって水分量が変わってしまうとこの方法が使いづらくなるので、なるべく調理方法は保温調理を選ぶようにしています。
……うん、書き終わってみると、あまり大した話ではなかったような……。
単純に、レシピなど恐れることはない。これに尽きますね。